アルミニウムAl,亜鉛Zn,スズSn、鉛Pb,水銀Hg(典型元素と遷移元素の境の金属) 

 典型元素と遷移元素の境にある金属で, Al(13)Zn12族),Sn(14) Pb(14)は〔 両性元素 〕とよばれ,これらの金属の単体は,酸とも塩基とも反応する@

Alは塩酸や希硫酸には溶けるが,濃硝酸・熱濃硫酸には溶けない。濃硝酸・熱濃硫酸のように強い〔 酸化力 〕を持つ酸と反応すると,金属の表面が酸化され,生成する酸化物Al2O3が表面をコーティングする。この表面の酸化物を〔 酸化被膜 〕といい,Alの場合はこの被膜が緻密なため,内部を保護してしまうため反応しなくなる。このような状態を〔 不動態 〕という。人工的に酸化被膜をつけた製品を〔 アルマイト 〕という。Al2O3は天然には,ボーキサイト,ルビー,サファイアの主成分として存在する。また,AlCuMgなどの合金を〔 ジュラルミン 〕という。

アルミニウムや亜鉛の酸化物,水酸化物は単体同様,酸・塩基と反応するA

アルミニウムの粉末と酸化鉄(V)の混合物を〔 テルミット 〕といい,点火すると多量の反応熱によって3000℃以上の高温となり,金属の溶接に利用されるB

硫酸アルミニウムAl2(SO4)3と硫酸カリウムK2SO4の混合溶液を濃縮すると,KAl(SO4)212H2O硫酸カリウムアルミニウムの結晶が得られる。これは〔 ミョウバン 〕と呼ばれ,K+Al3+の複数の陽イオンからなる塩である。このような塩を〔 複塩 〕という。

水銀は常温で唯一の〔 液体 〕の金属である。鉄やニッケル以外の金属とは合金を作りやすく,水銀の合金を〔 アマルガム 〕という。水銀の蒸気や,Hg2+からなる化合物は毒性が強い。

 

@ 酸,塩基のどちらと反応しても水素を発生する。

  ・酸との反応(例 アルミニウムと塩酸,亜鉛と塩酸)

〔 2Al + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2 〕〔 Zn + 2HCl → ZnCl2 + H2  〕

     (無機化学の反応式 パターン3 金属と塩酸 ⇒ その金属の塩化物+α)

・塩基との反応(例 アルミニウムと水酸化ナトリウム水溶液,亜鉛と水酸化ナトリウム水溶液)

   〔 2Al + 2NaOH + 6H2O → 2Na[Al(OH)4] + 3H2 〕(特殊な反応式なので覚える) 

                        Na[Al(OH)4]:テトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウム

   〔 Zn + 2NaOH + 2H2O → Na2[Zn(OH)4] + H2  〕(特殊な反応式なので覚える)

                        Na2[Zn(OH)4]:テトラヒドロキシド亜鉛(U)酸ナトリウム

Na[Al(OH)4]Na2[Zn(OH)4]について

それぞれ,Na[Al(OH)4]Na [Zn(OH)4]2のイオンからなる。[Al(OH)4][Zn(OH)4]2は錯イオンとよばれ,金属のイオン(陽イオンなので空の電子殻がある)の空の電子殻にOHの非共有電子対が共有結合したイオンである(通常,共有結合は互いに電子を出し合うが,この場合は一方的にOHの非共有電子対を金属イオンが共有している。この結合を特に配位結合という。)

[Al(OH)4] … Al3OH4つが配位結合    [Zn(OH)4]2 … Zn2+OH4つが配位結合

金属イオンに結合するOHなどの数は大体決まっている。例えば,Zn2Al3Cu2Agはそれぞれ4442個である。そのため,Zn2Al3OHと結合して[Zn(OH)4]2[Al(OH)4]となる。

 

A 単体のときとできるものは同じ(AlCl3 Na[Al(OH)4]など)。

 
 

B Alの方がFeよりもOと結合しやすいため起こる。〔 2Al + Fe2O3 → Al2O3 + 2Fe 〕

 

AlZnのイオンの反応】

Al3Zn2を含む水溶液にNaOH水溶液を加えていくと,初め白色沈殿を生じる@さらにNaOH水溶液を加えると,沈殿とOHが反応し沈殿が溶けるAAl3Zn2を含む水溶液にNH3水溶液を加えていくと,NaOH水溶液と同様に,初めは白色沈殿を生じるBさらにNH3水溶液を加えると,Zn2+の沈殿は溶けるが,Al3+の沈殿は溶けないC

 

@ OHと反応して水酸化物の沈殿ができる。

 Al3 + 3OH → Al(OH)3 〕〔 Zn2 + 2OH → Zn(OH)2 〕 

A 沈殿した水酸化物がOHとさらに反応して錯イオンになり溶ける。

〔 Al(OH)3 + OH → [Al(OH)4] 〔 Zn(OH)2 + 2OH → [Zn(OH)4] 〕 

B アンモニア水はNH3H2O?NH4OHの電離をしている。初めはこのOHと反応して水酸化物の沈殿ができる。

 Al3 + 3OH → Al(OH)3 〕〔 Zn2 + 2OH → Zn(OH)2 〕 

C Zn(OH)2NH3分子と反応して錯イオンとなり溶ける。Al(OH)3はこの反応をしない。  

   〔 Zn(OH)2 + 4NH3 → [Zn(NH3)4]2 + 2OH 〕 

                  [Zn(NH3)4]2:テトラアンミン亜鉛(U)イオン(Zn2NH3 4つが配位結合)



AlZnの単体の製法】

Alの単体は,鉱物である〔 ボーキサイト 〕(主成分Al2O3nH2O)から,酸化アルミニウムAl2O3をつくる。酸化アルミニウムは〔 アルミナ 〕ともいい,これを炭素電極で溶融塩電解すると得られる。この製法をホール・エルー法という。この方法は多量の電気を使うので,アルミニウムの単体はリサイクルの方が低コストである。酸化アルミニウムは融点が高い(2054℃)ので,融解した多量の〔 氷晶石 〕Na3[AlF6]を溶媒として加えると約950℃で融解する。

Znは閃亜鉛鉱ZnSから酸化亜鉛ZnOをつくり,これを炭素で還元するか,硫酸に溶かして電気分解すると単体が得られる。

 

【スズ、鉛】 

スズの単体はブリキ,はんだ,青銅@などに使われる。スズは酸化数+2+4の化合物をつくるが,酸化数+4のほうが安定である。したがって,Sn2+Sn4+となり〔 還元 〕作用を示す。

鉛はイオン化傾向が水素よりも大きいにもかかわらず,希塩酸,希硫酸には溶けにくい。これは希塩酸には塩化鉛(U)PbCl2の,希硫酸には硫酸鉛(U)PbSO4の難溶性の被膜をつくるためである。そのほか,Xを吸収するため,放射線遮へい物質となる。また,Pb2+は色々な陰イオンと反応して沈殿を生じるA

 

@ ブリキは鉄板をスズでメッキしたもの,トタンは鉄板を亜鉛でメッキしたもので,どちらも耐久性に優れた材料である。鉄,スズ,亜鉛のイオン化傾向はZnFeSnなので酸化による腐食はZnが最も受けやすく,Snが最も受けにくい。そのため,ブリキは腐食に強い材料となる。しかし,傷がつき一部のメッキがはがれると露出した鉄が先に腐食されてしまう欠点がある。一方,トタンは表面はやや腐食には弱いが,傷がつき一部のメッキがはがれても露出した鉄よりも先に亜鉛が腐食されるので,鉄の腐食を遅らせることができる。そのため,ブリキは傷のつきにくい内壁に,トタンは傷のつきやすい外壁の材料として用いられる。
  はんだは以前はスズと鉛の合金であったが鉛の環境への影響から,今日ではスズ,銅,銀の合金である。青銅はスズと銅の合金で,ブロンズ像の材料となる。

 
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